バトスピの世界観

契約編:界の世界観

第2章 エピソード1:カミュ

 

新たなレジェンドスピリットを求め、トア達は西の森へ向かっていた。フラウの先導で森の奥へ奥へと進んでいくと、周りの景色はどんどんと暗く深くなっていく。

「ここは何処? あたしたちレジェンドスピリットを探してたんだよね? なんかどんどん怪しい森の奥に入っていっちゃってるんですけど……」
「森なら大丈夫~。あ~ほら~、お城が見えてきたよ~」

森の奥に見えてきたのは、高い尖塔だった。こんな深い森の中に誰か住んでいるのだろうか。
フラウは無警戒に尖塔の方へと進んでいく。

「あ、ちょっ、フラウ、あからさまに怪しいから、気を付けて進みなさいよ~」
「うん~わかった~。わぁ、みんな来て~、お城が空に浮いてる~」

森が開けた先に見えてきたのは、底の見えない崖と、宙に浮く城、そして、それを繋ぐ長い吊り橋だった。

「ゴ、ゴーストは、出ないよな……」
「怪しい、怪しすぎる。ここは乗り込んでみるしかないよね!」
「おもしろそ~! 行こう行こう~」
「なんで楽しそうなんだ、このふたりは……」

吊り橋の前で騒ぐトアたちの背後から近づく影があった。音もなく刃がひらめき、トアの首筋に当てられる。

「何者? ……斬られてもしょうがない、よね?」
「うわっ、まってまって! 怪しくないよっあたしはトア! 契約の巫女だよ!」
「……? 巫女? ちょっと想像と違う……斬るしかない」
「その剣を収めろ。トアに手を出したら、お前もただでは済まないぞ」
「……分かった。別に本気じゃなかったし」

影から現れたのは銃のような剣を持った悪魔の少女だった。

「……ウチはカミュ。このドミナネリオ魔法学校の生徒。オマエたちは何者?」
「魔法学校? 学校なの? ここ」
「わぁ~、これが噂に聞いた学校か~」
「マジックスクール……ゴーストスクールじゃなかったか……」
「なるほど、この威容も納得だ。しかし、君は本当に魔法使い? そうは見えないけど」
「ウチらは銃とか剣で魔法を使う。ガジェットは常に進化してる、でしょ?」
「そういうものなのか……」

トアたちはカミュの案内で魔法学校の一室に案内された。そこで、レジェンドスピリットを探していることを説明し、カミュに探索の手助けを頼んだ。

「……レジェンドスピリット、ね。この学校には世界中のマジックアイテムや伝説のアイテムが保管されてる。レジェンドスピリットを捕獲して保管している人がいてもおかしくはない」
「え~、レジェンドスピリットを捕獲とか……ちょっと大変そうなんだけど、できそうな人っていたりするの?」
「……ここの教師たちは曲者揃い。昔、魔王やってた人もいる」
「へ、へぇ~、それはそれは……って大丈夫なの? ここ!?」
「いまは大分丸くなってるって話……でもやっぱり一番可能性がありそうなのは、校長かな」
「校長のマジックアイテムコレクションは、裏の世界では知らない者はいない……」
「……大体の話は分かった。校長のコレクションを暴く……面白そう、協力する」

カミュの話では、校長のマジックアイテムを集蔵している宝物室は魔法学校の地下にあるという。トアたちは、先の見えない長い長い螺旋階段を下りていく。

「ねぇ! この階段いつまで続くの? 先が見えないんだけど」
「……ウチも来るのは初めて。ループはしてないと思うから、そのうち着く……はず」
「ループ? はずぅ~?」

一方、その頃、ドミナネリオ魔法学校・地下宝物室。

「なんとかここまで来れたか……ったく階段がループしてるとか、しゃべる絵画があるとか、噂以上だな、ドミナネリオ魔法学校は」
「まあ、教団の秘術を修めた今の俺に掛かればどうってことなかったけどな」

相棒虫ガタルは、とある目的のために、トアたちよりも先にドミナネリオ魔法学校に潜入していた。

「さて、目的のオタカラはこの宝物室にあるはずだ。待ってろよ、団長。あんたの心臓を押さえて、グリューン∴バウムを頂くとするぜ」

ガタルが宝物室に入った後、ほどなくしてトアたちがやってくる。

「着いた~、一番乗り~♪」
「やっと……着いた……ちょっと休ませてぇ」
「賛成……もう、無理」
「ベリ~グロッキ~。脚がスティックのようダ」
「なかなかきつい道のりだったな。しかし、ガット。君は中央の吹き抜けを飛べばよかったんじゃないのか?」
「!」
「気付かなかったのか……」

宝物室の前で休憩を取るトアたちだったが、そこでカミュが異変に気付く。

「……宝物室の封印が解けてる……何事?」
「それってヤバかったりする?」
「この封印は普通の魔法使いレベルじゃ解けない。ウチが校長室に忍び込んで借りてきた鍵の宝珠が無ければ……開くはずない」
「忍び込んでってのは聞かなかったことにするけど、校長先生がうっかり封印し忘れたってことは?」
「あの校長がうっかりは……ない」
「ってことは、誰かが封印を解いて忍び込んだってこと?」
「……おそらくそう」
「目的があたしたちと同じレジェンドスピリットだとしたら、カイの仕業かも」
「だとしたら、あたしたちも急がなきゃ!」
「行こう! ウィズ、ガット、フラウ! カミュありがとね! カミュはこの事とは関係ないから、ここまでで大丈夫! 助かったよ」
「……ウチも行く。ここの封印を解ける魔法使いには興味ある。腕には覚えあるし」
「う~ん、じゃあ、遠慮なく頼らせてもらうよ、改めて行こう、みんな!」

宝物室に侵入するトアたち、そこは、果てが見えないほど巨大な空間に、大小様々なアイテムが雑多に並べられた巨大な博物館のような部屋であった。そこにあるものは、黒い聖剣や、2つで一組のノミ、巨大な羅針盤、6つある何かの探知機など、置いてあるものの法則性は見受けられない。

「……この宝物室、遭難するって聞いてたけど、納得」
「うわぁ、天井と奥が見えないよ。みんなはぐれないようにっ……て、フラウ~ひとりで先行かない~!」
「えへ~、ごめん~、珍しいものがいっぱいでつい~」
「あ、この石像ちょっとズレてる~? 直しておこ~っと」
「……綺麗に直った。美しい」

トアたちが奥へ進んでいく裏で、ガタルはトアたちに気づき罠を仕掛けていたが……。

「俺の仕掛けが解除された!?  なんなんだあの頭お花畑女は! またなのか? 俺の計算をくるわすのは、いつもあんなヤツラだ!」
「……しかし、こんな所でトア一行に出くわすとはな。テラードが聞いたら悔しがりそうだ」
「この先のエリアは……いいことを考えた少し遊んでやろうじゃないか」

トアたちはすこしずつ奥へ進んでいく。そうしてたどりついた場所は、様々なスピリットの石像が立ち並ぶエリアだった。

「これ、まさか剥製じゃないよね?」
「……そう思いたい」
「ちょっとぉ、ちゃんと否定してよぉ」
「あ~、カイザーアトラス皇帝の石像だぁ、おっきな鳥とか虎さんもいる~」
「あたしたちが仲間にしたレジェンドスピリットの石像があるってことは、さすがに剥製じゃないかぁ、よかった」
「スゴイスゴイ~このお馬さん、足が8本ある~」
「…………あれ~?」

フラウが見上げる馬に跨った騎士の像、と思われたものが突然動き出し、トアたち一行に武器が振り下ろされる。

「石像が動いた~!」
「……何事?」
「敵か!? トアは僕の後ろに!」
「トラップかエネミーか分からないが、ゴーストじゃなきゃ、相手してやるゼ☆」
「今のを避けるか、さすがフェルマとオボロを退けたことはあるってところだな」
「誰? こんなことをするのは」
「俺はガタル。世界崩壊契約者カイの契約スピリットだ」
「お前たちが探していたものは、これだよな? レジェンドスピリット蛮騎士ハーキュリー! お先に頂いたぜ!」
「そんな! 先を越されたなんて」
「本当は他の物を探しに来たんだが、思わぬ副産物ってとこだ。今は、お前たちに構っている場合じゃないんでな、お前たちはコイツと遊んでいってくれ」
「あ、待ちなさいっ! レジェンドスピリットを暴れさせるだけ暴れさせて、どこ行くのよぉ~~~っ!」
「……トア、ここでは戦えない。ここのアイテムを壊したらウチは退学だ」
「それはマズいね。じゃあ、逃げよう!」
「……了承。じゃあ、こっち……」

入口に逃げようとするトアたちだったが、ハーキュリーに回り込まれてしまう。

「あの馬、とんでもない速さね。とりあえず、みんなバラバラに逃げて~~~!」

四方に散り、物陰に隠れるトアたち。なかなか入口に辿りつけず、さらに奥に追い込まれてしまう。そんな中、カミュは何かに導かれるように、部屋の隅の置かれた壊れた巨大な墓石に吸い寄せられていく。

「我は最初の七将……もう何度目の目覚めになるか……我は永遠也……魔界の子よ……我と契約し……器となれ……ッ」

墓石から闇が溢れ出しカミュを覆っていく。その姿は、魔界七将パンデミウムであった。

「うそ……カミュってレジェンドスピリットと契約煌臨してたの!?」
「いや、あれは自分から契約煌臨した感じではなかった。あの巨大な墓石、あれにレジェンドスピリットが封印されていたんだ」
「とゆ~ことは~、この学校~、2つもレジェンドスピリットを保管してたの~?」
「このマジックスクール、アンビリーバボーだ」

パンデミウムを契約煌臨したカミュは手にした鎌を器用に操り、ハーキュリーを押し込めていく。鎌だけではない、パンデミウムから絶えず闇が広がり、ハーキュリーの動きを鈍らせているようだ。

「……最初の魔界七将は、相手の力を削ぐことを得意としていたと教わった。ザントワネット先生に感謝」
「……でも、これ以上ここで暴れるのは却下。ウチがパイモニア先生にお仕置きされる」
「だから、ここから……出・て・い・けッ!」

パンデミウムの鎌が空間を切り裂き、ハーキュリーが飲み込まれていく。

「……空間操作の魔法、なんとか出来た」

パンデミウムの姿が薄れカミュが戻ってくる。

「カミュ、大丈夫!? なんか黒くてモヤモヤしてたけど、あれヤバそうじゃない?」
「……魔界の住人は、だいたいあんな感じ。問題ない」
「そ、そっか、何かみんなのレジェンドスピリットとはだいぶ感じが違うな~って思ったんだけど、悪魔系はあんな感じかぁ~、あはははは」
「あらあら、随分とにぎやかなことですね。いったい何の騒ぎです?」

事件もひと段落したところで、一人の女性が姿を現す。

「うぁ……パイモニア……先生……」
「校長室への無断侵入、宝物室の鍵の持ち出し、宝物室への侵入、保管してあるアイテムの破損、封印指定スピリットの契約などなど、数え上げればきりがないですね。カミュさん」
「あ……ハイ……スミマセン……」
「よろしい、で、そちらの方々は?」
「あの……ええと……その……」
「カミュが借りてきた猫みたいにちっちゃくなってる……」
「カミュかわい~ね~」
「変われば変わるものだな」
「oh~あのデビルウーマン、そんなにヤバイのか」

ドミナネリオ魔法学校でのガタル侵入事件は、これで無事一見落着となった。ガタルはあの後、上の学校でも少し暴れたらしいが、学校の教師たちにより撃退されたという。

しかし、宝物室から「グリューンハート」と呼ばれるマジックアイテムは取り戻せなかったとのこと。しかし、それは今のトアたちには関係のないお話し。

そして、一夜明けたドミナネリオ魔法学校。

「……ウチ、盗まれたグリューンハートを取り戻さないと……卒業、できなくなったらしい」
「ええぇ~~、大変じゃない、それ!」
「……結構、ヤバイ」
「じゃあ、あたしたちと一緒に来る? あたしと契約しようよ!」
「ウチと契約? なんて物好き……了承」

こうしてカミュは魔法学校から盗まれたマジックアイテムを取り返すため、トア達と行動を共にすることになったのであった。

冥相棒カミュ